食生活の乱れによる現代人の味覚の衰えが問題になっています。豊かな食生活に不可欠な味覚や嗅覚などの〝五感〟。毎日の食事や遊びのなかで意識して刺激していきましょう。
幼いころに〝味わう力〟を養うことで一生の食生活を豊かなものに!
人間の味覚は、乳幼児期に基本的な味を経験することによって培われます。幼いころに口にした味の記憶が蓄積されて味覚が形成され、それが一生の食生活や健康にも大きな影響を与えるのです。いかに乳幼児期の食体験が重要であるかがわかるでしょう。
味と匂いには密接な関係があります。食べ物の味は味覚とともに嗅覚によっても、おいしいかおいしくないが判断されます。風邪をひいて鼻が詰まると食べ物の味がいつもと違って感じられることがあるのは、嗅覚が鈍くなるからです。また“おいしい”という感覚は、ただ味覚だけで感じとるのではなく、“匂いを嗅ぐ”“舌で触る”“色を見る”“食べる音を聞く”など、人が持っている五感をフルに使って感じとるものです。
五感を洗練させることは、食に対する子どもの興味や関心を高めるだけでなく、健康や豊かな食生活にもつながります。普段の食事の際に、「甘酸っぱいね」「昆布のいい香りがするね」「シャキシャキしているね」などと話しかけ、味や匂い、舌触りや喉ごしなどを意識させるのもよいでしょう。毎日のちょっとした一言で子どもの食体験はより豊かなものになるはずです。
●フランスでは「味覚の授業」がある!?
美食の国として有名なフランスでも日本と同様、味覚の衰えが問題になっています。それに危機感を抱いた有志のシェフたちによって、フランス全土の小学校で、子どもたちの正しい味覚を育てるために「味覚の授業」が行われるようになりました。このような五感を使った食育活動は世界から注目され、日本の小学校(一部)でも実施されています。
どんな味がする? 味覚遊び
■遊び方
①4つの基本の味がする食材を用意します。
(食材例) ※いずれも口に入れるのはごく少量に
塩味:塩、みそ、水で薄めたしょうゆ
苦味:ゴーヤ、セロリ、カカオ100%のチョコレート
酸味:りんご酢、レモン汁、無糖ヨーグルト
甘味:グラニュー糖、いちごジャム、クッキー
②目を閉じさせて1つずつ食材を口に入れます。
③それぞれどんな味がするかを言葉で表現させます。
④同じ種類の味がするその他の食材を、それぞれ挙げさせます。
※食材を複数用意して、同じ種類の味で仲間分けさせてもよいでしょう。
★まだ言葉で味を表現できない小さな子どもの場合は、目を開けて食材を見ながら口に入れ、「これはしょっぱいね」「こっちは甘いね」「これとあれは酸っぱい味だね」という具合に、一緒に味を確かめながら遊ぶとよいでしょう。
どんな匂いがする? 嗅覚遊び
■遊び方
①匂いのわかりやすい食材を複数用意します。
(食材例)カレー粉、にら、にんにく、梅干し、チーズ、チョコレートなど
②中の見えない箱や容器の中に食材を入れて、匂いを嗅がせます。
③中に入っているものを当てさせます。
※食材を複数用意して、同じ種類の匂いや味で仲間分けさせてもよいでしょう。
☆月刊誌『灯台』2013年10月号「ヤング・ミセス・プラザ」より転載