幼児期の子どもは、遊びや生活のなかでさまざまな数や量などを認識していくことで、算数の基礎となる数量概念を少しずつ獲得していきます。今回は、数量に出合い、考える機会となる遊びを紹介します。
物とのかかわりを通していろいろな数に触れてみよう
幼児期の子どもは、物を並べたり、数えたりする作業が大好き。遊びや日常生活のさまざまな活動のなかで、物の多い・少ないを認識することから始まって、少しずつ数量の概念を身につけていくと言われています。
例えば、おやつを家族に配る(1つのものに1が対応する1対1対応)・折り紙を色別に分ける(分類)・おもちゃを大きさの順に並べる(順列)・本の高さを比べる(高低)など、普段当たり前に行っている行為も数量の概念に出合い、考える機会となります。
こういった活動を十分に行うことがないまま、小さいうちから数字を暗唱できたとしても、実際の物の数と数字を一致させるまでには至っていないことが多く、それでは数の概念を理解しているとは言えません。子どもが理解しやすい3くらいまでの数から始め、10までの数、それ以上の数と、徐々に大きな数を扱いながら、自然な形で数量に触れられる機会をつくってあげるとよいでしょう。
この時期に、さまざまな数や量、物の大きさの違いなどに気づき、数に親しむことが、小学校以降の算数の素地をつくります。まずは楽しむことを目的にして、ぜひ生活のなかで数を意識してみてください。
生活や遊びのなかで、数量に触れてみよう
<だんごづくりで数に触れよう>
子どもは生活のいろいろな場面で、数の概念に触れていきます。ここでは、だんごづくりの場面での働きかけの例を紹介します。おやつづくりをしながら、楽しく数への興味づけをしましょう。
だんごのつくり方
コシのあるだんごをつくれる、だんご粉を使ったレシピを紹介します。あんこなどを添えてどうぞ。
<材料> だんご粉100g、水80g
①ボウルにだんご粉と水を入れて、よくこねて丸めます。いろいろな大きさのだんごを15個程度つくりましょう。
②鍋に湯を沸かし、だんごをゆでます。浮き上がってきたら、さらに2~3分ゆでましょう。
◆多いのはどっち?(2歳くらいから)
皿を2枚用意して、1枚にはだんごを2個、もう1枚には3個のせて、「どちらがたくさんあるかな?」と質問します。子どもが答えたあと、「いち、に、2個あるね」「いち、に、さん、こっちは3個あるね」と数えてみせます。
◆どちらが大きい?(2歳くらいから)
一番大きなだんごと、一番小さなだんごを使います。2つのだんごをよく観察して、大きさを比べます。次に、小さいものから大きいものに、大きさ順に並べることにも挑戦してみましょう。5個くらい並べたら、ママやパパが数えてみせましょう。
◆皿に分けてみよう(3歳くらいから)
人数分の皿を用意して、全員が同じ数になるように考えながら、だんごを分けてみます。人数に対して、だんごが足りなかったり、多かった場合には、どうしたらよいのかも考えてみましょう。
いろいろな場面で数に触れよう
幼児にとって、数を数えることは楽しい遊びの一環です。さまざまな場面で、数を意識させてみましょう。最初はママやパパが声かけをするだけでOK。理解させようとするのではなく、自然な形で数に触れていきましょう。
◆おもちゃを数えてみよう
ミニカーや積み木などのおもちゃで遊んでいる時に、実物と対応させながら「いち、に、さん、3つあるね」などと声かけしてみます。
◆階段の数を数えてみよう
階段をのぼる時に、段を数えながらのぼってみましょう。初めのうちは「いち、に、さん」「いち、に、さん」と繰り返すだけでもOK。慣れてきたら数を増やしていきましょう。長い階段ならば、11段目以降は、また1から数えてもかまいません。
◆お手伝いで皿を数えよう
お手伝いの場面でも、「お皿を3枚持ってきてね」などと、数を意識したお願いをしてみましょう。家族の人数を数えさせて「いくつお皿がいるかな?」と考えさせてもよいでしょう。
◆背の順で並んでみよう
パパやママ、きょうだいと背の順で並んだり、えんぴつやクレヨンを大きさ順に並べてみるなど、大きさを比べて遊んでみましょう。「一番大きい」「一番小さい」が理解できたら、「○番目に大きい」「○番目に小さい」も教えてあげましょう。
◆学習ポスターや絵本を活用
数字と実物の数の絵を対応させた学習ポスターなども、数への興味や関心につながります。絵本の挿し絵も、数を数える遊びに使えるものがありますよ。
数の概念が身についてきたら難しい遊びにも挑戦!
数を数えることができるようになったら、ちょっと難しい遊びにも挑戦! 小学校入学後の算数にも通じます。
◆多い色を当てよう
いろいろな色のおはじきを適当に並べた状態を見て、多い色が何色かをすばやく予測して答えます。自分が多いと思った色のおはじきを数えてみて、数が多いほうが勝ち。親子で対戦してみましょう。
◆おはじきジャンケン
初めにおはじき10個を適当に並べた状態を見て、子どもに数えさせます。ジャンケンをして勝った人がおはじきをもらい、すべてなくなるまで続けます。最後におはじきを数えて、どちらのおはじきが多いかを競いましょう。
◆手のなかにはいくつある?
初めにおはじきを5個用意して、子どもに数を数えさせます。親は右手にいくつかのおはじきを、左手に残りのおはじきを握って隠し、右手のおはじきだけを見せて、「もう片方の手にある、おはじきは何個?」と、残りのおはじきの数を当てさせます。慣れたら、おはじき10個でも挑戦!
◆サイコロ足し算
2つのサイコロを振って、出た目の合計を数えて遊びます。順番にサイコロを振って、数の大きい人が勝ち! 足し算の基礎になります。
※「6」の目をシールなどを貼って隠しておくと、10までの数の足し算となり、難易度を調整できます。
☆月刊誌『灯台』2021年6月号「子育てプラザ」より転載