事故や災害で傷ついた子どものこころのケア

災害や事件・事故、逆境による強いストレスによってこころが傷ついた時などに発症するPTSD(心的外傷後ストレス障害)。子どもの場合は、その後の人生にとって大きな障壁になってしまうこともあります。

トラウマ(心的外傷)とPTSD

 事件・事故などに遭遇した際、対処しきれないほどの強いストレスやショックを受けることをトラウマ(心的外傷)といいます。
 その直後、出来事を苦痛をともなって繰り返し思い出したり、トラウマを思い出させる活動や場所、人物を避けるようになったり、また不眠や食欲不振などになることがあります。このような重い症状が1ヵ月以上続く場合はPTSD(心的外傷後ストレス障害)と考えられますので、精神科(心療科)や心療内科などでの専門的な治療とケアが必要です。

子どものこころはトラウマを受けやすい

 子どもは大人よりもトラウマを受けやすいと言われています。ストレスの受け方は個人差がありますが、ほとんどの場合は時間の経過とともに薄れていきます。
 しかし、地震や津波、洪水などの自然災害や、火事や交通事故、暴力や性犯罪の被害を受けたり、目撃したり、またそれによって家や家族・友人を失うなどの強い衝撃や恐怖を受けたことなどが、トラウマになりやすい出来事です。

PTSDの主な症状

 子どものPTSDの症状は、基本的には大人と変わりありません。子どもの場合は、自分の体験や気持ちを上手に認識したり言葉にしたりできないため、症状が行動面で現れることがあります(表1)。

表1 子どものPTSDの症状
・フラッシュバック*に襲われる
・原因に関するものを怖がる
・受けた事件を友だちや兄弟に再現する
・集中力低下や成績不振
・赤ちゃん返りや甘え
・悪夢を見る
・夜中に目を覚ます
・無口になる
・攻撃的になる
・行動範囲が狭くなる
・ひきこもる
・恥ずかしさや罪の意識を感じて自分を責める

*フラッシュバック・・・苦しみの原因となる出来事の記憶が、苦しみをともなって実際に起きているかのように思い出される心理現象

適切で早い対応がPTSDを予防する

 こころに傷を受けた子どもに対する適切で早い対応が、傷を癒し、PTSDの予防になります。そのため、子どもの様子に気を配り、子どものことを受け入れ、安心感を与えることが大切です(表2)。子どもが自ら話さないかぎり、無理に聞き出そうとはしないことです。
 こころの回復のためには、安心できる環境づくりが不可欠です。症状の訴えが激しい場合には、すぐに専門機関に相談するようにしてください。

表2 PTSDを防ぐには
①怖がるときに抱きしめる
②起きた出来事を繰り返し話す場合でも耳を傾ける
③努力したことなどをほめて自信を持たせる
④甘えや赤ちゃん返りを受け入れる

☆月刊誌『灯台』2011年5月号より転載