便利すぎる生活にご用心!手先の器用さ育っていますか?

近年生活の利便化が進み、私たちの身の回りには、手先を使って細かい作業をする機会が減ってきています。そんななかにあって、子どもたちの手先の器用さを養うためにはどのようなことを心がけたらよいのでしょうか。家庭でできる工夫を紹介します。

手や指先を使った活動で、動きや感覚を養おう

 「より便利に」「より簡単に」なった現代の生活。このことは、子どもの発達を考えると、良いことばかりとは言えません。昔なら、生活や遊びのなかで自然に身につけられた動きや指先の感覚を、身につける機会がないまま過ごせてしまうからです。その結果、小学生になっても、「箸が使えない」「はさみが使えない」「顔を洗えない」「ぞうきんが絞れない」などという子どもが増えてきているのです。
 手先の器用さを養うには、毎日少しずつ、手や指先を使った活動を繰り返すことが大切です。自然な形でトレーニングができるように、生活や遊びのなかで工夫をしていきましょう。ただし、親の思いが先行し、すぐにできるようになることばかりを求めると、子どもは嫌がります。その子のペースを尊重して、あせらずに楽しい雰囲気で行ないましょう。
 また子どもは、自分の周りにいる大人たちの行動をよく見て真似します。教えようと意識していないことを含めて、生活習慣のほとんどを、親などの周囲の大人を通して身につけてしまうのです。その意味では、子どもの手本になれる行動をしっかりと示すことも、大人が果たす重要な役割だと言えそうですね。

手先の器用さを身につけるには?

手先の器用さは、経験のなかで育まれます。生活や遊びに、手や指先を使った活動を取り入れていきましょう。

●手を使った遊びを楽しもう

おはじきやお手玉、折り紙やあやとり、コマ回しや指相撲などの昔ながらの遊びは、手や指の繊細な動きや緊密な連携が求められます。1人で集中して遊ぶなら、ブロックや紐通しなどもおすすめ。泥をこねて団子を作ったり、虫を捕まえたり、外遊びのなかにも手指の動きや感覚が求められる要素はたくさんあります。素朴な遊びを楽しむことで、生活に必要な手や指の動きが鍛えられるのです。

●はさみやのりを子どものそばに

工作でも、楽しく器用さを育めます。3歳くらいになったら、子ども専用のはさみやのりを、いつでも使える場所に用意してあげましょう。ボトルタイプの液状のりなら、指先で量を調節しながら使う感覚を身につけられます。

●身の回りのことやお手伝いを任せよう

「大人がやったほうが早いから」、「子どもにやらせると返って手間がかかって面倒くさいから」。そんな気持ちで、子ども自身が身の回りのことやお手伝いに取り組む機会を奪ってしまってはいませんか?「自分でやりたい」という気持ちは、子どもの成長の大チャンス。生活に必要なさまざまな動きや感覚を身につける貴重な機会にもなります。時間や気持ちに余裕があるときだけでもいいので、取り組ませてあげましょう。

料理のお手伝いには、手先を使った作業がたくさん。レタスをちぎる、卵の殻をむく、豆をさやから取り出すなど、子どもができることを任せてみましょう。

できるかな? 子どもに教えたい基本動作

まずは、大人が正しいやり方を意識して、子どもに見せることから始めましょう。子どもに「自分でもやってみたい」という意欲が見られたら、できそうなことからチャレンジさせて。

◆箸を使う
3歳ごろから使い始めることの多い箸。初めは「握り箸」ですが、徐々に正しい使い方を教えていきましょう。

・上の箸
鉛筆のように、人差し指と中指と親指の3本で持ち、人差し指と中指で動かして食べ物をつかみます。うまくできないようなら、上の箸だけを持って、箸先を上下に動かす練習をしてみましょう。

・下の箸
親指と人差し指の付け根で挟み、薬指の爪の横にあてて固定します。下の箸は固定したまま、上の箸だけ動かして食べ物をつかみましょう。

・サポートのコツ
小さくサイコロ状に切ったスポンジや、丸めたアルミホイルを使っての練習がおすすめ。先に大人が箸でスポンジなどをつかんだ状態にし、子どもに箸を持つように促してみましょう。
※誤飲に気をつけましょう。

◆ボタンを留める
着替えに時間がかかるからと、ボタンのない服ばかり着せていると、いつまでもボタンを留める習慣が身につきません。手元をよく見て、しっかりと留められるようにしましょう。

ボタンと穴の位置をよく見て確認しながら、取り組むように声を掛けましょう。
うまくできない場合には、大人がボタンを半分だけ通しておいて、最後にボタンを引っ張るところだけを子どもにやらせてみましょう。

・サポートのコツ
はじめのうちは、大きなボタン、厚みのあるボタンなど、子どもが手で捉えやすいボタンがつけられている服を選びましょう。生地がやわらかく、ボタンの穴がゆったりと作られていることの多いパジャマのボタンで練習するのもおすすめです。

◆はさみを使う
上手に使うことが、意外と難しいはさみ。子どもの手の大きさに合ったものを選ぶことも大切です。

長い距離を切るときには、切っている途中に、刃を完全に閉じないことがポイント。刃を閉じると、切り口がギザギザになってしまいます。

はさみを持つ手だけではなく、もう一方の手も同時に動かすのがポイント。特に、曲線を切るときには、カーブに合わせて、手首をなめらかに動かすことが大切です。

・サポートのコツ
はじめは、はさみを正しく持ちながら、細長く切った紙を1回でチョッキンと切り落とす練習をしてみましょう。刃を連続で動かすことになれたら、四角や丸など、複雑な形にも挑戦を。

◆ぞうきんを絞る
小学校に入っても、うまくできない子どもが多いぞうきん絞り。「どっちがたくさんお水を出せるかな?」と、大人の真似をしながら、楽しく取り組めるような声掛けをしてみましょう。

体に対して、ぞうきんを立てて持ちます。
右手と左手を、逆方向に回転させて、しっかりと絞ります。

・サポートのコツ
ぞうきんを順手でつかみ、体と両手が平行になっている「ヨコ絞り」だと、力が入りきらず、しっかりと絞れません。正しい持ち方を教えてあげましょう。

絞ったぞうきんは一度広げて、半分にたたむと、キレイに拭くことができます。

◆顔を洗う
顔を洗うことは、幼い子どもには難しい動作です。時間をかけて丁寧に指導していきましょう。

左右の手を合わせて、水をすくう「器」を作ります。水が漏れないように、指の間をきちんと合わせましょう。水をすくった手を顔に近づけるのではなく、顔を手に近づけましょう。

・サポートのコツ
はじめは、入浴時などの濡れてもよい場面での練習を。「水がこぼれないような器の形をつくれるかな」などと声掛けをしながら、湯船のなかで取り組むのがおすすめです。

◆折り紙を折る
指先の細かい動きが求められる折り紙。大人が手本を見せながら、じっくりと取り組みましょう。

持ち上げて折るのは、子どもにとっては難しい作業です。平らな場所に紙を置いて、両手を添えてゆっくりと折りましょう。

・サポートのコツ
「端と端を合わせる」などの作業が難しい場合には、折り目となる場所に目印をつけるのがおすすめ。折り目となる場所に線を書いたり、穴あけパンチで穴をあけて、揃えるべきポイントを示したりしながら、練習をしてみましょう。

☆月刊誌『灯台』2018年7月号「ヤング・ミセス・プラザ」より転載