科学マジックは、楽しくできる科学実験の一種です。今回は、身近なものを使った科学マジックでそのおもしろさを体験してみましょう。〝不思議だな〟と感じる気持ちが、子どもが科学へ興味を示す第一歩です。
楽しい手品で子どもの知的好奇心を育もう
子どもたちは知的好奇心が旺盛なため、子どもたちの「なぜ?」「どうして?」などの質問に答えるのが大変、と感じているママやパパもいるのではないでしょうか。最近はインターネットを利用すれば、答えとなる情報にすぐにたどりつくことができるので、一見、疑問を解消しやすい環境のようにも思えますが、その分、知識や擬似体験のみが先行して、子どもたちの心を揺さぶる新鮮な実体験がおろそかにされがちだとも言われています。
そこで今回は、身近なものを使った科学マジックを紹介します。予想を裏切るような不思議な現象に、子どもたちもびっくり仰天。原理も解説していますので、タネを知りたい子には、理解できそうな範囲で解説してあげるとよいですね。自分の目で見て、〝すごい! 不思議!〟と感動したり、〝なぜだろう?〟と疑問に思ったりすることは、子どもたちの科学への興味を搔き立てる原体験になるでしょう。アッと驚く科学マジックを、家族みんなで楽しんでみてください。
安全に配慮して、みんなで楽しく盛り上がろう!
特別な器具や薬品は必要なし。日用品を使ったマジックで、楽しく手軽に科学に親しみましょう。ただし、安全のために、以下のようなことを、あらかじめ子どもと約束しておくとよいですね。
①絶対に子どもだけではやらないようにしましょう。
②針やつまようじなどの先のとがったものなどを使うマジックが含まれています。大人と一緒に扱い、使った後はすぐに片づけるようにしましょう。
③水やお湯を使うマジックがあります。洗面器やバスタオルの上など、こぼれてもよい状態で行ないましょう。また、熱湯の扱いには、くれぐれも注意してください。
◆こぼれない水
水を入れたコップを逆さにすると、水がこぼれてしまいますが、紙一枚でこぼれないようにします。
・用意するもの
水を入れたコップ、使い古しのはがき
①水を入れたコップにはがきをのせて、はがきを手で押さえながら、ゆっくりと逆さまにします。
②そのままはがきから手を放しても、水はこぼれません。
◯タネあかし
水には表面を自ら収縮して、できるだけ小さな表面積をとろうとする性質(表面張力)があります。この手品で水がこぼれないのは、はがきが水の表面張力と、はがきの下から押し上げる大気圧によって支えられ、しっかりとふたをしているからです。
◆泳ぐつまようじ
大きな洗面器に水を張り、つまようじを浮かべると、スイスイと泳ぎ出します。
・用意するもの
水を張った洗面器、つまようじ、シャンプー(界面活性剤入りのもの)
①あらかじめ、つまようじの持つ側にシャンプーをたっぷりとつけておきます。
②水にそっと浮かべると、水の上を泳ぐように前に進みます。
◯タネあかし
シャンプーに洗浄成分として含まれる界面活性剤には、「水の表面張力を弱める」という働きがあります。シャンプーが溶け出して、つまようじの持つ側周辺の表面張力が弱まると、先端部側の表面張力につまようじ全体が引っ張られて前に進みます。
◆変身色水
1つのコップに入った紫色の液体を、2つのコップに分けて注ぎ入れます。すると、あら不思議。それぞれ別の色に変わりました。
・用意するもの
ガラスのコップ(3個)、紫キャベツ、熱いお湯、レモン汁、重曹、どんぶり、ガーゼなど
① 千切りにした紫キャベツをお湯の入ったどんぶりに入れてよくかきまぜ、色素を抽出します。色が出たら、冷めるのを待って、ガーゼなどでこして、コップのうちの1つに注いでおきましょう。
②残りのコップには、1つにレモン汁を、もう1つに重曹を仕込んでおき、その上から①の液体を注ぎます。
◯タネあかし
紫キャベツの色素は、酸性で赤からピンクに、アルカリ性で黄から緑に変化する性質があります。レモン汁は酸性、重曹はアルカリ性なので、異なった色に変化するのです。
◆割れない風船
風船に針を刺してみましょう。大きな音をたてて割れてしまうはずですが、あることをすると割れません。
・用意するもの
ゴム風船、セロハンテープ、針
①ゴム風船をふくらませて、表面に適当な大きさに切ったセロハンテープを貼り付けておきます。
②セロハンテープを貼った場所に針を刺すと、風船は割れません。
◯タネあかし
風船が破裂するのは、伸張していたゴムが弾性でもとの状態に戻ろうとするため。セロハンテープを貼っておけば、風船に傷がついても表面が縮まないので、風船は割れません。
◆消えるコイン
コインの上にガラスの空きビンを置き、水を入れてふたをすると、たちまちコインが消えてしまいます。
・用意するもの
コイン、ジャムなどの空きビン(底に凹凸がないもの)、水
①テーブルの上にコインを置き、ふたをした空きビンをのせます。この時、空のビンを通してコインは見えています。
②ふたを取り、ビンの中を水で満たし、再びふたをするとコインは見えなくなってしまいます。
◯タネあかし
水の屈折率とガラスの屈折率の違いを利用したマジックです。透明なガラスを通して見えていたコインは、水を注ぐことによって水面で光が全反射するために見えなくなります。
◆透視術
マークが書かれた紙を子どもに選んでもらい、封筒に二重に入れて封をします。魔法の筒をのぞいて、何を選んだのかを言い当てましょう。
・用意するもの
白い封筒、それより小さい茶封筒、コピー用紙(茶封筒に折らずに入れることのできるサイズに切ったものを3枚程度)、黒い画用紙、サインペン
①コピー用紙にそれぞれ、♡や♪などのマークをサインペンで大きく書いておきます。
②子どもに①の中から好きなものを1枚選んでもらい、茶封筒に入れ、さらに白い封筒に入れて封をしてもらいます。
③黒い画用紙を丸めて、長さ10cmくらいの筒を作り、封筒に密着させ、光に当てながらのぞくと封筒の中のマークがわかります。
◯タネあかし
封筒の中が見えないのは、封筒が光を乱反射しているから。筒を使って外からあたる光の反射光を遮断し、封筒の内部を通過してきた光だけで見るようにすることで、中身を見ることができるのです。
科学マジックで、表現する力を身につけよう!
見るだけではなく、演じることもマジックの楽しみ。自分もやってみたいという子には、ぜひやらせてあげましょう。ママやパパと一緒に練習して、できるようになったら、お友だちやおじいちゃん、おばあちゃんに披露してもよいですね。「さあ、みなさん、〇〇(子どもの名前)のマジックショーが始まりますよー」「(コップを逆さまにしながら)ほーらね! こうしても水がこぼれません」などと、どうしたらより相手に伝わりやすいのか、セリフやわかりやすい動きも工夫してみましょう。パパのワイシャツにフェルトで作った蝶ネクタイ、マントなどを身につけて、マジシャンらしい雰囲気を演出しても楽しそうですね。
☆月刊誌『灯台』2018年4月号「ヤング・ミセス・プラザ」より転載