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【発達障害】第5回 診断名にとらわれ過ぎないで

児童精神科医
川崎医療福祉大学 特任教授
佐々木正美

 今後、ADHD(注意欠陥・多動性障害)とLD(学習障害)を取り上げるにあたり、もう一度、連載第1回でも触れた「発達障害は“スペクトラム(連続体)”である」ということを確認したいと思います。なぜなら、「自分のお子さんに複数の障害が存在するのでは」と悩んでいるお母さんが、まだまだたくさんいるからです。
 発達障害は、どの特徴に目を向けるかで診断名が変わってきます。具体的には、注意力欠陥や多動性という特徴に注目した場合は「ADHD」、応用力の弱さに注目した場合は「LD」、目を合わせないなどのコミュニケーションの問題に注目した場合は「自閉症」と呼ぶことが多くなります。
 しかし、これらの特徴は、すべての発達障害に共通してみられるもので、その境界線を明確に区別することは難しいのです。ですから、私が強調して伝えたいのは、「診断名にとらわれ過ぎる必要はない」ということです。むしろ私たちは、発達障害に共通する「脳の統合機能が弱いこと」に注目したほうがいいでしょう。脳は、それぞれの部位が異なる機能を持ち、それらを統合しながら働きますが、発達障害の場合、個々の部位は正常でも、それらを統合する機能が弱いのです。
 よく発達障害の子たちは「空気が読めない」と言われます。これは、空気を読むためにはその場にいる人たちの表情、言葉、言葉の調子など、さまざまな要素を統合的にとらえて判断することが必要なのに、それができないためです。
 私たちは、ADHD、LD、自閉症という診断名にとらわれ過ぎず、こうした共通する特徴をよく理解して、発達障害の子、またその親御さんたちと接することが大切です。このことをふまえて、次回はADHDとLDの特徴に注目し、その対処法を紹介します。

発達障害への理解を深めるために⑤ 
●「脳の統合機能が弱い」ことが共通の特徴で、表情や言葉など複数の要素を統合的に理解することが苦手

☆月刊誌『灯台』2013年8月号より


佐々木正美 ささき・まさみ●1935年生まれ。群馬県出身。新潟大学医学部卒業。臨床約40年の経験を持つ。現在、川崎医療福祉大学特任教授。自閉症の支援プログラム(TEACCH)をアメリカから日本に紹介した。著書は『子どもへのまなざし』(福音館書店)など多数。