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【発達障害】第2回 障害への「無理解」こそが最大の不幸

児童精神科医
川崎医療福祉大学 特任教授 
佐々木正美

 先日、ある母親から相談を受けました。話を聞くと、息子さんは明らかに高機能自閉症(知能障害を伴わない自閉症)でした。小学校高学年から学校に行かなくなり、母親は体罰を与えながら無理やり行かそうとしてもダメで、結局50歳近くまで引きこもり……。こんなにかわいそうなことはありません。
 なぜこうなったのか? 最大の原因は、親を含む周囲の無理解です。障害を正しく理解し対応できれば、50歳近くまで引きこもるようなことはなかったと思います。ところが、理解がなかったため「どうしてこんなことがわからないの? できないの?」と責めるようになり、挙句の果てには、体罰を与えてまでも学校に行かせようとしたのでしょう。
 詳細は次回以降の連載で説明しますが、たとえば自閉症の場合、目で見て確認できることや、規則・法則が明確なものはよく理解できるので、小学校低学年までは学校の勉強も結構できます。ところが、想像力が弱いため、応用問題や推理力を必要とするそれ以降の学習には、ついていけなくなります。また、想像力の欠如は、「気がきかない」「横着だ」という誤解も生み、人間関係でも苦労します。
 つまり、できることとできないことの落差が大きいのです。周りがそれを認識しないと、「怠けているんだろう」と非難する気持ちが出てきてしまいます。
 周りに発達障害と認識されない子たちは、冒頭で紹介したようにずっと苦しみます。こんな不幸はありません。家族はもちろん幼小中高の先生方、友だち、職場の人たち、近所の方々にも理解してほしい。そうすれば、多くの人が幸せに暮らせるはずです。
 次回からは、発達障害をより深く理解するために、その症状を詳しく解説しましょう。

発達障害への理解を深めるために② 
●発達障害の子は、できることと、できないことの落差が大きい
●家族だけではなく、先生、友だち、近所の方など、あらゆる人たちの理解が必要

☆月刊誌『灯台』2013年2月号より


佐々木正美 ささき・まさみ●1935年生まれ。群馬県出身。新潟大学医学部卒業。臨床約40年の経験を持つ。現在、川崎医療福祉大学特任教授。自閉症の支援プログラム(TEACCH)をアメリカから日本に紹介した。著書は『子どもへのまなざし』(福音館書店)など多数。