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【発達障害】第1回 「障害」と認識されにくい発達障害

児童精神科医
川崎医療福祉大学 特任教授 
佐々木正美

 一口に「発達障害」と言っても、その中には自閉症、ADHD(注意欠陥多動性障害)、LD(学習障害)など、いくつかの障害が含まれます。また、それぞれの障害の境界線は「あいまい」で、はっきりしません。
 たとえば自閉症だけ見ても、知能が高いものを「高機能自閉症」と呼び、その中でも言葉の発達が優れているものを「アスペルガー症候群」と呼びます。しかし、区別する明確な基準がありません。つまり、「スペクトラム(連続体)」なのです。
 あるお母さんが、自分の子どもは2つの障害を持っていると思って混乱していました。1人の医師からは「(お子さんは)自閉症です」と言われ、別の医師からは「ADHDです」と言われたのです。実はこれは間違いで、この子が持っているのは1つの障害だけ。どういう特性が一番強いかによって、呼び方を変えているだけなのです。
 さらに言えば、健常者も部分的に発達障害の特性を持つ場合があります。医療の世界ではある時期、「あの子は自閉症である」「自閉傾向がある」「自閉的である」などと複数の言い方をしたことがありましたが、健常者との境界線もまた「あいまい」なのです。
 このように発達障害は、境界線があいまいで認識されにくいため、本人も周りも苦労します。知的障害とは異なり、普通にできることも多いだけに、逆に「どうしてこんなことができないの!」と叱責されます。場の空気を読むのが下手なので、人間関係をうまく築けず苦しむことも多いのです。
 つまり、最も大事なことは「周囲からの正しい理解」です。次回は、そのことについて触れたいと思います。

発達障害への理解を深めるために① 

●それぞれの障害を区別する明確な基準はなく、その多くが「連続体」である
●「周囲の正しい理解」が何よりも大切

☆月刊誌『灯台』2013年1月号より


佐々木正美 ささき・まさみ●1935年生まれ。群馬県出身。新潟大学医学部卒業。臨床約40年の経験を持つ。現在川崎医療福祉大学特任教授。自閉症の支援プログラム(TEACCH)をアメリカから日本に紹介した。著書は『子どもへのまなざし』(福音館書店)など多数。