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自らもがんを患いながら「がん教育」を推進する学校長

東京都豊島区立明豊中学校校長
小林豊茂

がん教育はわが使命 中学校校長の挑戦

 東京都豊島区は、全国に先駆け、2012年度からがん教育を推進しています。私は「豊かな心を育む、生命の教育」という視点から、がん教育に取り組んできました。そうしたなか、2016年夏の定期検診で肺がんが見つかったのです。
 がんは3箇所に判明。そのうち1つは直径が4センチもあり、ステージ4※といわれました。しかし、生来のポジティブな性格もあり、「50代半ばでがんになったのは、この経験を伝えていくためなんだ。必ず、再び生徒の前に立つ」と心が決まり、動揺することはありませんでした。がん教育の講師の方ががん患者で、その方の、がんを克服した体験を聞いていたことも大きかったですね。
 治療は抗がん剤の投与と放射線治療に決まり、2学期の始業式の翌日に入院。治療が功を奏して、12月には復職することができました。抗がん剤の影響で髪の毛はすべて抜け落ちており、ニット帽をかぶっての復職でしたが、その初日の全体集会では、あえてニット帽を外して、次のように伝えました。「周囲の人が偏見をもたず、励まし、元気な姿を見せてくれることが、患者を勇気づけるのです」

がん患者を支える社会を築く一助に

 今年3月、わが校が行なう土曜授業のがん教育の講師に、東京女子医科大学のがんセンター長である、林和彦先生をお招きしました。授業終了後、親しく話す機会を得、5月13日には、林先生を講師とするがん教育の公開講座が実現。私もがん経験者として登壇しました。当日は生徒に加え、約100人の保護者や地域の方々が集まり、大成功の公開講座となりました。この講座がきっかけとなり、来年、林先生と一緒にがん教育の出張授業に行くことも決まりました。今後も、がん患者を支える社会を築く一助になることを願い、がん教育に尽力していきます。

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 親ががんになったときに、子どもに伝えるべきかどうか。これはとても難しい問題ですが、長年、子どもを見続けてきた私は、「中学生くらいであれば、聞いた瞬間は受け入れられなくても、のちに必ず強い味方、支えてくれる存在となってくれるはずだ」と考えています。家族で喜びもつらさも共有することが患者の生きる力となり、それが子どもにもプラスになるのです。

※がんの進行度合を表す言葉。ステージ4はもっとも進行している状態。
 
☆月刊誌『灯台』2017年8月号より転載


小林豊茂 こばやし・とよしげ●東京都出身。56歳。2014年4月、豊島区立明豊中学校に校長として赴任、現在に至る。全国新聞教育研究協議会会長。